Ⅳ 国税庁方式による取引相場のない株式の評価額との関係17【財産評価基本通達₆】(この通達の定めにより難い場合の評価)この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。この点、経営承継法(民法特例)によると、このような乖離は、国税庁方式が相続税・贈与税の課税を前提とした評価方式であり、経営承継法の固定合意とその趣旨・目的を異にすることから、当然に生じるものといえるとされています。後継者と非後継者はそのような乖離が生じることを認識した上で合意を行っているのですから、乖離が生じること自体は特に問題はないのです。また、前述のような課税上の疑義について、経営承継法評価ガイドラインは、「①合意時価額が贈与税の計算における価額を上回ったとしても、従前の裁判例(東京地裁平成17年10月12日判決)に照らして直ちに課税問題が生じるとも考えられないし、②合意時価額が贈与税の計算における価額を下回ったときには、いずれが相続税法上の「時価」として妥当であるか等(東京地裁平成15年2月26 日判決)を見極めて納税申告をすることが望まれ」る旨解説しています。【引用判決①東京地裁平成17年10月12日】「ところで、評価通達は、このような原則的な評価手法の例外として、「同族株主以外の株主等が取得した株式」については、配当還元方式によって評価することを定めている。この趣旨は、一般的に、非上場のいわゆる同族会社においては、その株式を保有する同族株主以外の株主にとっては、当面、配当を受領するということ以外に直接の経済的利益を享受することがないという実態を考慮したものと解するのが相当である。そして、当該会社に対する直接の支配力を有しているか否かという点において、同族株主とそれ以外の株主とでは、その保有する当該株式の実質的な価値に大きな差異があるといえるから、評価通達は、同族株主以外の株主が取得する株式の評価については、通常類似業種比準方式よりも安価に算定される配当還元方式による株式の評価方法を採用することにしたものであって、そのような差異を設けることには合理性があり、また、直接の経済的利益が配当を受領することに限られるという実態からすれば、配当還元方式という評価方法そのものにも合理性があるというべきである。」「被告の主張をすべて考慮しても、本件株式について評価通達に定められた評価方法によらないことが正当と是認されるような特別の事情があるとはいえない。したがって、本件売買取引は、相続税法7条の「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」には該当しない。」判決は、取引相場のない株式の譲受けについて、税務署長が相続税法第7条の「著しく
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