第2章 遺留分に関する民法特例と取引相場のない株式評価の必要性16経営承継法評価ガイドラインに従って民法おける取引相場のない株式の時価を算定したとしても、これが税務申告に適用できるか否かは別に検討する必要があります。固定合意においては、後継者が株式を贈与等により取得することが要件となっているため、まず、贈与税に係る価額と合意時価額との関係が問題となります。 合意時価額の算出に当たり、例えば、次のような場合には国税庁方式に基づく価額との間で乖離が生じることが考えられ、むしろ評価額が一致することが稀だと思われます。経営承継法評価ガイドライン 保有資産は少ないが大きな利益を出しているために収益方式を採用相続税財産評価基準 原則として収益方式は採用されていない経営承継法評価ガイドライン 資産規模が大きいために純資産価額方式を採用相続税財産評価基準 通達上の大会社に当たり、類似業種比準価額の方が低いケースであるため、類似業種比準価額で評価事業承継税制の改正によって、今後、一括贈与を前提とした贈与税の納税猶予制度を適用することが多くなると考えられますが、合意時価額と贈与税に係る国税庁方式に基づく価額との間の乖離が生じてしまうケースが想定されます。このときには、合意時価額が贈与税の計算における価額を上回ったときには、合意時価額によって課税されないかという懸念(評基通6適用)が生じ、その逆のときには、合意時価額によって納税申告をすることができないかという疑問が生じます。Ⅳ国税庁方式による取引相場のない株式の評価額との関係₁.合意時価額による納税申告の可否
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