Q&A 事業承継をめぐる非上場株式の評価と相続対策
23/38

2 自社株対策の基本的視点309 株式承継先が明確であることも、自社株対策の要件として重要です。直系親族の中から後継者を選定することが一般的ではありますが、「経営」の承継と「資本」の承継は一致すべきかということについても検討が必要でしょう。 後継者の選定は、経営者のリーダーシップのもとに進めるべき事項です。経営者の専決事項であるといえます。更に、株式承継者が明確になった場合、株式承継に争いが生じることなく、確実に株式が承継されるように事前に対策を講じることも重要です。 生前に株式承継が完了しない場合に備えて、遺言や信託等により株式承継先を明確にすることも検討すべき事項です。ただし、他の相続人に対しても遺留分などの十分な配慮を行う必要があります。自社株評価の引下げ 自社株評価の引下げ策を検討するためには、まず株式評価の仕組みを知ることが必要です。また、自社の株式評価を行い、高株価になっている原因を探ることも必要です。 株式評価の方法は、相続税の財産評価基本通達によって定められています。平成元年以降の税制改革・財産評価基本通達の改正により意図的な株式評価引下げ策に関しては、持株会社の評価方式を中心として種々の封じ込め策が講じられてきました。 また、近年、過度の評価引下げ策に関しては、財産評価基本通達の中の伝家の宝刀6項(※)により、個別に税務否認が行われ、後日通達改正が行われる等課税が強化されています。 評価引下げ対策を検討する場合、経営的に合理性を欠いたような対策は要注意です。直前対策にこだわらず、長期的な視点から株式評価引下げの仕組みを構築することが必要ではないかと考えます。※6項:この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る