相続税対策としての家族信託
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(1)はじめに 信託をよく知る人たちの中には、「信託の活用方法はいろいろあるが、節税対策には使えない」ということを言う人もいます。はたして、そうでしょうか。 本書は、相続・事業承継対策から始まり、従来の相続税や所得税対策の発想では成し得ない、「信託」を活用したからこそ成し得たスキームを重要なテーマとして、「信託をいかに活用すれば、より良い相続・事業承継ができるのか」を解説しています。 大正11年に制定された我が国の信託法は84年の歳月を経て、平成18年に大改正され、その後、試行錯誤を繰り返しながら現在に至っています。 その間、日本の内閣も自民党から民主党、そして自民党へと変遷を遂げ、税法も大きく変わり、相続税率も所得税・住民税率も最高55%となり、相続税の基礎控除が大きく引き下げられ、今や先進国では相続税負担が一番重い国となりました。 さらに税以前の問題、つまり遺産分割をめぐっての争いも増えており、調停事件が年間1万件以上となっています。遺言書も決して万能ではありません。むしろそれを巡っての遺留分減殺請求の訴訟が絶えません。また、少子高齢化が進み、認知症高齢者が厚生労働省の発表だけでも430万人を超え、その予備軍を含めると800万人に達するとされています。これらの人たちの相続問題も深刻で、しかも成年後見制度利用者は18万人しかありません。成年後見制度の限界も指摘されています。 このように相続・事業承継対策が急がれる社会となりましたが、相続人の争いと、相続税贈与税対策などの税の問題を同時に解決する手段は、「信託」をおいて他に無いと言っても過言ではありません。従来のような相続税対策だけを行えば良かった時代から、「遺産分割をいかに平穏に収めるのか」も問われる時代になったと言えるのではないでしょうか。「遺
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