第1節 債務控除1894保証債務と連帯債務1保証債務と連帯債務保証債務とは、主たる債務者がその債務を履行しない場合に、保証人がその主たる債務者に代わってその債務を履行する従たる債務をいいます(民446)。連帯債務とは、数人の債務者が、同一の内容の債務について、独立して全責任を負う債務をいいます(民432)。例えば、連帯債務者のうちの1人が債務を履行すれば債権は消滅します。連帯債務者の各自の負担部分が定まっており、連帯債務者のうち1人が弁済したときには、ほかの連帯債務者に対して求償することができます。ここでは、債権者は、保証債務は、主たる債務者が債務を履行しない場合に保証人に債務の履行を求めるのに対し、連帯債務は、債権者は、連帯債務者全員に債務の履行を求めることができる点に違いがあります。2債務控除の可否被相続人の保証債務については、控除することができません。なぜなら、保証債務は、保証債務を履行した場合であっても求償権の行使により補てんされるという性質を有するため、確実な債務とはいえないからです。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額を控除することが可能です(相基通14-3)。被相続人の連帯債務については、被相続人の負担部分が明らかとなっている場合にはその金額は控除することができます17。17 民法上、連帯債務の各自の負担割合について特段の定めをしていませんが、一般に負担割合は当事者が定めたもの、その定めがないときは連帯債務により受けた利益の割合に従い、それによっても定まらない場合には、各自平等な割合によるべきものと考えられています。
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