仮装経理の実務対応
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は じ め に粉飾決算は、税務上「仮装経理」と呼ばれ、古くから監査のあり方も含め問題とされており、最近では、平成29年6月に富士ゼロックスのニュージーランド子会社等の不適切会計(公表された報告書によれば一部は明らかに粉飾決算に該当する)が公表され、その前には粉飾決算かどうか明らかではないものの東芝の不適切な会計処理も大きな問題となった。このように粉飾決算(以下、特定の場合を除き「仮装経理」という)は、カネボウ等の過去の例を引くまでもなく現在においても大きな問題であると言える。この仮装経理は、実際には、大企業ばかりでなく、目先の資金繰りに追われるような中小企業においてこそ身近な問題である。筆者は、税理士として、買収される会社の税務リスク診断として買収対象会社の財務諸表分析等の依頼を受けることがある。この依頼に基づき対象会社の経理内容を分析してみると、対象会社が買収価額を上げる目的から財務諸表内容を繕い仮装経理を行っていたりすることは稀ではない。また、その仮装経理の後始末について、後続の事業年度で会計上も税務上も不適切な方法により解消している場合も散見される。このことはある意味、仮装経理を表ざたにしたくないとの会社の意向が大きいのであろうが、一方では仮装経理に係る税法の規定について、あまりなじみがないことに由来していることも考えられる。さらに、税務当局から開示されている情報も少ないという事情も影響していると思われる。たとえば、法人税基本通達には仮装経理に係る項目は存在せず、また、国税庁が提供しているタックスアンサーで「仮装経理」を検索してもヒットしない状況である。加えて、仮装経理の実際上の処理(減額更正処分)は、税務当局によっ

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