〈入門〉建設業会計の基礎知識
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1.企業価値創造の経営と会計情報近年、企業価値の創造と拡充、そしてその維持を重視する経営が定着してきています。いわゆる価値創造経営(Value-BasedManagement)です。価値創造経営の進展は、一般の企業経営において尊重される重要理念であることはいうまでもありませんが、いまやそれは、国家全体のマネジメント・システムにおける構築理念ともなりつつあります。このような環境の下で、すなわち企業価値創造の経営にとって、企業の実態を見極める姿勢と手法の活用が不可欠です。ICT(情報化)社会における経営者もしくは管理者は、マネジメントの方向を可視化する経営(ManagementforVisibility)を重視しなければなりません。そして、その情報の中核に会計情報があります。公共事業の世界では、わが国においてもPFI(PrivateFinanceInitiative:民間資金活用型公共投資)の事例が少しずつ進展しています。これは、国家、地方自治体等のいわゆる公的セクターにおける財政難(場合によっては財政破綻)から、民間の資金の参加を促そうとするものです。しかし、これが単に民間による資金支援だけにとどまるならば、それは本来のPFIではないと考えます。PFIには、その用語の直接的な意味よりもずっと重要な意義と手法が、その背景にあって議論されていることに気づかなければならないはずです。それは、設計、建設、維持管理、そして運営(マネジメント)にいたるすべての過程において“ビジネス”の英知が主導的に活用されなければならないからです。このような進展の中から、VFM(ValueforMoney:投下資本の価値)の認識が急速にクローズアップされています。なぜならば、伝統的な公共的社会資本投資のコスト(建設、運営、資金コスト、リスク等)とPFIのライフサイクル・コストとを比較した場合、後者すなわちPFIコストが前者を下回らなければならないからです。この差額こそがVFMで、それは、国民すなわち納税者の享受する価値であり、この理念の下では、この国民(納税者)価値を極大にする投資選択が求められるはずだからです。第1部企業経営で求められる“質”の高い会計情報とは2
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