改訂増補 予算会計
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後さらに予測主義が加速します。予測がブレることにより、実績財務諸表が歪められるリスクに常にさらされています。実績財務諸表の適正性は、「予測の正確性」が担保されなければならないのです。しかしながら、予測の根拠となる予算作成にはルールがなく、予算作成プロセスの内部統制は整備・運用されていません。✔なぜ「キャッシュ・フロー予算」が必要なのか?技術革新や生産の自動化等により、世界的には供給過剰が加速していくため、長期的にはデフレの時代になります。物の価値は下がり、お金の価値が上がっていく時代です。会社の成長のための設備投資やM&Aは、お金がなければできません。例えば、ROEを上げるために市場から自己株式を取得するにもお金が必要です。お金は「会社(法人)の血液」です。お金が流れなくなった時に会社は死を迎えます。社員は生活基盤を失い、債権者や株主も大きな損失を被ります。だからこそ「キャッシュ・フロー経営」が重要なのです。ところが、その具体的な数値目標としての「予算キャッシュ・フロー計算書」は作成されていません。予算損益計算書の作成に留まっています。その一方で、東芝やオリンパスなどの粉飾決算(不正会計)は後をたたず、資本市場の発展に大きなブレーキがかけられています。粉飾決算(不正会計)は、なぜ起きるのでしょうか?上場会社は、決算短信で業績予想を発表しています。投資家はこの指標を重視して、「株を買う、保有を続ける、株を売る」という経済的意思決定をしています。業績予想の売上高の10%以上、利益の30%以上、予想値からかい離すると判断した場合には、すみやかに業績予想の修正と修正理由を発表しなければなりません。下方修正に合理的な理由がない場合、投資家の信頼を失い、株価が暴落する危険性があります。そのため経営者は、「何としても業績予想を実現する」という強いプレッシャーを受け、結果として経理操作による粉飾決算へと繋がってしまう潜在的危険性があります。また、内部予算が粉飾決算の引き金になる場合もあります。ある会社で、A事業は年率10%で成長しており、B事業は逆に年率10%で縮小しているとします。この場合、A事業部門の目標売上高を当期比10%増加に設定することは合理的ですが、B事業部門の目標売上高を同様に当期比10%増加に設定されたら、実現は限りなく不可(2)
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