建設業の経理№82
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はじめに長期請負工事に関する収益の計上については,工事進行基準又は工事完成基準のいずれかを選択適用することができるとされていたことから(企業会計原則注解注7),同じような請負工事契約であっても企業の選択により異なる収益等の認識基準が適用されていました。そこで,企業会計基準委員会(ASBJ)と国際会計基準審議会(IASB)で会計基準のコンバージェンスに向けた協議が進められた結果,平成18年7月にワーキング・グループが設置され準備作業が始まり,平成19年12月27日に企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」(以下「会計基準」という)及び企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という)が公表されました。公表から10年を経過した会計基準及び適用指針ではありますが,「ポイント解説!会計基準と実務」の最終回にあたり,基本的な内容についての振り返りのため,本会計基準及び本適用指針について解説します。なお,本稿は,執筆者の私見であり,有限責任監査法人トーマツの公式見解ではないことをあらかじめお断りしておきます。1本会計基準の範囲本会計基準は,工事契約に関して,施工者における工事収益及び工事原価の会計処理並びに開示に適用されます。本会計基準において,「工事契約」とは,仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち,土木,建築,造船や一定の機械装置の製造等,基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うものを指します(会計基準第4項)。このため,請負契約ではあっても,弁護士が訴訟にあたって業務を請け負うことや定期清掃を請け負う契約等については,専らサービスの提供を目的とする契約のため,本会計基準の対象とはなりません。また,外形上は工事契約に類似する契約であっても,工事現場での作業を実施するといった,工事に係る労働サービスの提供そのものを目的とするような契約会計ポイント解説!会計基準と実務⑱最終回企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」等の解説有限責任監査法人トーマツ公認会計士稲垣太郎Spring2018建設業の経理57

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