建設業の経理№82
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12問題の提起企業会計基準委員会(以下,「ASBJ」という)は,平成29年7月20日に,企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」(以下,「基準案」という)および企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下,「適用指針案」という)を公表した1。この基準案に対しては,広くコメントが募られ,建設産業経理研究機構もそれに応じた2。筆者も,このコメントを作成した会計基準研究会に委員の一人として参加したが,その当時より,今回の基準案の下で,長期請負工事における工事進行基準が認められていることに一種の違和感を覚えていた。委員会開催当時は,筆者自身の中でも基準案を十分に咀嚼できておらず,感じた違和感の原因がどこにあるのか,今ひとつはっきりとしなかったが,本稿ではこれを改めて考察する。つまり,基準案の思考と工事進行基準とは理論的に整合するのか,また,係る基準案が基準化されることによって,工事進行基準の扱いがどのように変わり,また今後将来的にどうなっていくと予想されるのか,本稿ではこの問題を検討する。今回の基準案が従来の収益認識基準と異なる点は,なんといっても,「履行義務」なる概念を導入し,この「履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する(基準案14項⑸)」としている点であろう。つまり,履行義務の充足ということが収益認識のきっかけとされるのであるが,それではこの履行義務とはいかなるものか,次節では基準案および適用指針案に基づいて,これを考える。履行義務の性質基準案は,履行義務を次のように定義している(基準案6項)。1基準案の概要については,泉[2017]あるいは川西・島田[2017]等を参照されたい。2当該コメントの内容については,(一財)建設産業経理研究機構[2017]を参照されたい。「収益認識に関する会計基準」の下での工事進行基準専修大学商学部教授石原裕也Spring2018建設業の経理17
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