建設業の経理№78
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建設業に多くの問題があることはかなり以前から認識されていたことである。少なくとも1995年の建設産業政策大綱には,現在とほぼ同じ問題が整理され,「エンドユーザーにトータルコストで良いものを安く」「技術と経営に優れた企業が自由に伸びられる競争環境づくり」「技術と技能に優れた人材が生涯を託せる産業づくり」の3目標が掲げられている。その重点課題としては,①雇用労働条件の改善と人材確保,②生産性の向上,③建設生産システムにおける合理化推進,④建設産業における品質,安全性の確保,⑤建設産業の国際化への対応,⑥不良不適格業者の排除,⑦建設産業に対する理解の増進が提示されている。ほとんどの課題が,現在の社会保険未加入対策の元となった「建設産業の再生と発展のための方策2011~2012」と共通の課題であるが,どうして長きにわたって問題が解決しないばかりか,リーマンショックの頃には,業界は全ての政策を無に帰す泥沼のようなダンピング合戦を繰り広げてきたのか。そこにこの産業の根本的な問題がある。第一に,現場で働く技能労働者(以下技能者)を,雇用しなかった,もっといえば,雇用するという発想すらなかったことである。だから,雇用改善などといったところで何も解決するはずがなかった。そして,需給の変動があるから雇用できない,技能者は自由を好み雇用されたがらない,固定給だと一生懸命働かない,請負の方が儲かる,実際昔は元請の監督より羽振りが良かった……今になっても様々な理屈が述べられる。少なくとも統計データにおいては,昔から大企業の社員の方が技能者よりも賃金は上であるし,固定給だと一生懸命働かないという理屈が真ならサラリーマンもそうであるし,みかけの収入が多いのと賞与や退職金等の積立を考慮した場合のトータル収入は意味が異なるし,親方の収入は個人収入ではなく事業収入と考えた方が合理的であるし,収入と所得を混同している場合も少なくないこと等々を考慮すれば,上記の理屈は道理にかなっていないのである。そもそも日給月給,すなわち日給×労働日数という働き方は,派遣労働の典型であり,建設業は派遣が禁止されているのであるから職業安定法に抵触する可能性があること,請負(一人親方)に関しても大半が指揮命令を受けていて偽装請負である可能性が高いことを考慮すれば,雇用しないことを正当化できる根拠はない。1.社会保険を問題にした理由「うちの技能者はほとんどが直用だ,専属であって下請とは一線を画している」等もよく第1部学識経験者の視点から社会保険加入の促進と将来の取り組みの方向性芝浦工業大学教授蟹澤宏剛Spring2017建設業の経理5
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